こんにちは、サステナブルライターの山下です。
みなさんは「バイオ炭」という言葉をご存知ですか?
もしかすると、知っているという方は少ないかもしれません。
また、バイオ炭というワードを聞いたことはあっても、詳しく知らないという方も多いでしょう。
そこで今回は、バイオ炭とは何か、そのはたらきや効果、問題点などについて、わかりやすく解説します。
バイオ炭とは?
バイオ炭とは、食品ロスや木材、廃棄物などの生物資源を「炭化」したもののこと。
具体的には「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超えの温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義されています。
バイオ炭には、土壌を改良するほか、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を土の中に閉じ込めるのに役立つなど、多くのメリットがあると考えられています。
バイオ炭とは何かを理解するうえで大切なのが「炭化」というキーワードです。
炭化とは、酸素が少ない状態で物を加熱し、炭素をたくさん含む物質に変えることをいいます。
また、炭化はしばしば「燃焼」と混同されることがありますが、実はこの2つは違うものです。
燃焼が周囲の酸素と結びつくのに対し、炭化は酸素の少ない状態で起こるのが特徴です。
バイオ炭にはどのようなものがある?
炭化の代表的な例として挙げられるのが、バーベキューなどで使われる木炭です。
木炭は、木材を酸素の少ない状態のまま、高温で蒸し焼きにするなどの方法で作られています。
バイオ炭には、ほかにも多くの種類があります。
例えば、収穫したお米を精米するプロセスで発生するもみ殻や、果樹などの枝を剪定したときに出る剪定枝(せんていし)、食品ロスもバイオ炭にできるとされているのです。
さらに、下水の汚泥や家畜などの排泄物なども多くの炭素を含むため、バイオ炭として生まれ変わらせることができます。
従来は捨てられていたゴミをバイオ炭として再利用するこうした取り組みは、徐々に進められているところです。
バイオ炭のはたらきと3つの活用方法
では、バイオ炭にはどのような使い道があるのでしょうか?
はたらきと活用方法を3つご紹介します。
①土壌改良剤
まず、日本で古くから行われてきたように、バイオ炭を田畑などの土壌に混ぜ込み、土壌改良剤として利用する方法があります。
では、バイオ炭にはどのような使い道があるのでしょうか?
はたらきと活用方法を3つご紹介します。
土壌にバイオ炭を混ぜると、水が染み込みやすくなったり、酸性化してしまった土壌を中和したりするはたらきが期待されます。
そのため、土壌の品質が改善し、作物が育ちやすくなると考えられているのです。
②吸湿・消臭機能
続いて、バイオ炭には吸湿・消臭機能もあるとされています。
一般的に、炭には微細な穴が多く空いています。
そのため、空気に触れる表面積が多く、こうした形状から、空気中の湿気やにおいのもとを吸着する効果が期待されるのです。
実際に、炭を利用した消臭剤なども市販されており、バイオ炭にもこうした効能があると考えられています。
③炭素貯留
さらに、バイオ炭には、地球温暖化の原因となるCO2を閉じ込める効果もあるとされています。
木炭や竹炭といったバイオ炭をつくるプロセスでは、植物が成長する間に光合成によって取り込んだCO2が内部に固定されます。
みなさんもよくご存知のように、CO2は気体であり、そのままではすぐに大気中に混じってしまうため、CO2だけを取り出してとどめておくのは困難です。
しかし、炭化することによって、CO2をバイオ炭の中に安定的に固定し、とどめておくことができるようになるのです。
バイオ炭を土壌改良剤として、田畑などの土壌に混ぜ込むと、半永久的にCO2を土の中に貯めておくことができるようになります。
これを「炭素貯留」と呼びます。
バイオ炭によって地中に貯留されたCO2は、燃やされない限り、再び大気中に放出されることはないといいます。
そのため、バイオ炭による炭素貯留は、大気中のCO2を減らす効果が期待され、地球温暖化対策としても有効であると考えられています。
(参考:https://biochar.jp/whatisbiochar/)
バイオ炭はどうやって作る?
バイオ炭を作る方法はいくつかありますが、一つの例として、竹を使ってバイオ炭を作る方法を紹介します。
竹は、生えるのが早くてたくさんあるので、バイオ炭の原料に適しています。
竹を使ってバイオ炭を作るには、以下のような手順で行います。
- 竹を乾かします。竹に水分が多いと炭化しにくいので、十分に乾かす必要があります。
- 竹を切ります。竹は長すぎると炭化器に入らないので、適当な長さに切ります。
- 竹を炭化器に入れます。炭化器とは、金属製の筒で、中に火を入れて竹を焼くことができる道具です。竹は井桁に組んで炭化器に入れます。
- 竹に火をつけます。炭化器の下から火を入れて、竹に火がつくまで待ちます。
- 竹を焼き続けます。火が大きくなったら竹を追加していきます。竹が全部黒くなるまで焼き続けます。
- 竹を冷やします。竹が全部黒くなったら火を消して、冷めるまで待ちます。
バイオ炭とくん炭はどう違う?
くん炭とは、もみ殻や稲わらなどを原料として作られる炭化物で、バイオ炭の一種です。
くん炭には、もみ殻くん炭や稲わらくん炭などがあり、もみ殻や稲わらを高温で焼成することで作られます。
土壌改良剤のほか、高い消臭・調湿・浄化作用を持っていることから、消臭剤や空気や水の浄化にも使われてきました。
バイオ炭は主に土壌改良や炭酸ガスの固定化を目的として作られ、大量に土壌に混ぜ込まれることで長期間の炭素固定を実現します。
一方、くん炭は主に室内の消臭や調湿を目的として使われ、使用寿命が過ぎると廃棄されることもあるため、バイオ炭と比べて環境への貢献度が低いとされています。
バイオ炭の抱える問題点
こうした多くのメリットがあるバイオ炭ですが、問題点も指摘されています。
その1つが、バイオ炭の普及率が低いということ。
環境省によると、2018年度時点でバイオ炭を土壌に活用している農地は、わずか250ヘクタールに過ぎません。
全国の農地面積は合計で450万ヘクタールとされていますので、まだ1%にも満たないのです。
(参考:https://www.chubu.meti.go.jp/d34j-credit/platform/column/20211021column.pdf)
また、これまでは、バイオ炭の活用をCO2の削減方法として位置付ける国の政策がありませんでした。
これも、今までのバイオ炭の普及率が低かったため、CO2削減効果が見込みにくいとされてきたことが側面が影響しているようです。
しかし、2020年12月に国が「グリーン成長戦略」を策定し、この中で初めて、バイオ炭を用いた資材の開発や農業のあり方、バイオ炭についての規格などを新たに定める方針が示されました。
背景には、温暖化をはじめとする気候変動について研究を行っている国際機関IPCCが、2019年にバイオ炭を土壌改良剤として使用することによる炭素貯留量を測定する方法を定めたことに起因しています。
今後は、国内でもバイオ炭を活用するための法整備や方法がしっかりと整備され、バイオ炭の普及率も向上していくと考えられるでしょう。
(参考:https://www.meti.go.jp/press/
2020/12/20201225012/20201225012-2.pdf)
資源循環を促進するバイオ炭に期待
木炭に代表されるバイオ炭には、さまざまな可能性が秘められています。
下水汚泥や食品ロスを活用したバイオ炭についても、活用の取り組みが進められているとはいえ、まだ発展途上の段階にあると言えるでしょう。
こうした新たな技術が発展し、これまでは捨てられていた未利用資源が有効活用されるようになると、資源の循環も促進されると考えられます。
バイオ炭のこれからの開発やさらなる利活用に、今後も目が離せません。
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