こんにちは、サステナブルライターの山下です。
ニュースなどで、最近よく耳にするようになった「サーキュラーエコノミー」。
「何となく聞いたことはあるけど、本当のところどういう意味なの?」
と思っている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、そもそもサーキュラーエコノミーとは何か、なぜ今注目されているのかなどについて、わかりやすく説明します。
また、サーキュラーエコノミーを国内で実践している企業や自治体の取り組み事例についても、簡単に紹介します。
サーキュラーエコノミーとは?
出典)環境省「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」
サーキュラーエコノミーとは、これまでは捨てられていた廃棄物や原材料をリサイクルして商品などに生まれ変わらせるような経済モデルのことです。
「循環(型)経済」と呼ばれることもあります。
廃棄物がごみとして捨てられるのではなく、手を加えられることで再び資源として活用される。
こうしたループをぐるぐると繰り返すようなイメージです。
実は、産業革命以降、世界では、このようなサーキュラーエコノミーがあまり実践されてきませんでした。
これまでは、
地球から資源を取り出し(Take)、
それを使って製品をつくり(Make)、
使い終わったら捨てる(Waste)という流れだったのです。
このように、一方通行で循環することのない経済モデルを「リニアエコノミー」や「線型経済」といいます。
一方で、廃棄物もリサイクルして再び活用するサーキュラーエコノミーでは
「捨てる(Waste)」というプロセスをできる限りなくすようにします。
そのため、資源を取り出したり、製品をつくったりするプロセスにおいても、のちのちリサイクルすることを念頭に置いた設計が求められるのです。
このようにサーキュラーエコノミーでは、従来のリニアエコノミーと比べて考え方そのものが大きく異なります。
【コラム】サーキュラーエコノミーの反対「リニアエコノミー」
リニアエコノミー(線型経済)とは、資源を取り出し、製品をつくり、使用後は捨てるという一方通行の経済モデルです。
リサイクルが組み込まれておらず、廃棄することが前提とされています。
そのため、大量生産•大量廃棄につながっています。
18世紀後半から始まった産業革命以後、ほとんどの世界の経済モデルがこのリニアエコノミーだったと考えられています。
しかし、経済のベースとなる資源は限りあるもの。
これまでは、その貴重な資源を使い捨てし続けてきたといっても過言ではないでしょう。
このまま資源を使い切ってしまうと、私たちの将来の世代が今のような暮らしを続けることは難しくなってしまうと考えられます。
そのため今、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの転換が迫られているのです。
なぜ今、サーキュラーエコノミーが注目されているの?
実は、サーキュラーエコノミーという考え方そのものは、最近始まったものではありません。
今から60年近く前に、科学者によって提唱されたものなのです。
2010年代ごろから欧州を中心にサーキュラーエコノミーへの転換を目指すさまざまな動きが生まれ、それが世界に広がっていったと考えられます。
近年の気候変動への危機感の高まり
サーキュラーエコノミーが注目される背景のひとつには、近年の気候変動に対する危機感の高まりがあるのではないでしょうか。
グリーンピース・ジャパンによると、
2020年にはカリフォルニアやオーストラリアで大規模な森林火災が起こり、
日本を含むアジアは洪水や土砂災害に見舞われました。
また、日本では、2021年夏も記録的な豪雨が観測されています。
このような異常気象と人間活動との関連性は、ゼロではないと考えられているのです。
気象庁によると、
長期的にみれば、人間活動による地球温暖化によって
異常気象の頻度が増えているとされています。
こうした度重なる異常気象によって、気候変動の状況を心配する企業や人々が増え、サーキュラーエコノミーに関心が寄せられているのではないでしょうか。
石油や天然ガスが枯渇してしまうという懸念
さらに、私たちが今、エネルギー源として多くを頼っている石油や天然ガスは、あと約50年で枯渇してしまうと考えられています。
こうした背景も、サーキュラーエコノミーが注目されている理由のひとつではないかと筆者は考えています。
参考)資源エネルギー庁「令和2年度エネルギー白書」
サーキュラーエコノミーとSDGsとの関係
出典)国際連合広報センター
国連が定めている
「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)」。
パッと見てサーキュラーエコノミーと関連がありそうなものは、12番目の「つくる責任 つかう責任」でしょうか。
サーキュラーエコノミーという経済モデルで新たな成長を目指すという意味では、8番目の「働きがいも 経済成長も」も当てはまるかもしれません。
ですが、そもそもサーキュラーエコノミーとは、使い捨てではない「持続可能な」経済モデルです。
その意味では、
何番目の目標に当てはまるかと考えるのではなく、
サーキュラーエコノミーとSDGsは同じ目標を共有している
と考えた方がよさそうです。
【企業編】サーキュラーエコノミーの取り組み事例
神奈川県川崎市の日本環境設計株式会社は「大量に捨てられている服を循環させたい」という思いから、服に限らずいろいろなものを新しい製品に生まれ変わらせています。
具体的には、小売店や消費者の協力のもと回収した古着からポリエステル繊維を取り出し、同社の独自技術によってこの繊維を再生ポリエステル原料に変え、新しい服をつくる「BRING」という事業を行っています。
また、このほかにもプラスチックを回収して、新たなプラスチック製品に変える「BRING PLA-PLUS(プラプラ)」といったさまざまな取り組みを行っている注目の企業です。
一方で、石川県金沢市のカエルデザイン合同会社では、
さまざまな障がいをもつ方々が海洋プラスチックやフラワーロス(廃棄される花)などを素敵にアクセサリーにアップサイクルしています。
筆者も、以前カエルデザインのアクセサリーを購入させていただきましたが、かつて捨てられていたペットボトルなどのごみだったとは思えないほど素敵なもので愛用しています。
アクセサリーの包装にも、段ボールや古紙などが利用されていて、環境への配慮が徹底されていました。
売上の一部は、海洋ごみの調査やクリーンアップを通して、海や川の環境保全を行っている非営利の環境NGOへ寄付されています。
出典)筆者私物(カエルデザインのイヤリング)
【自治体編】サーキュラーエコノミーの取り組み事例
漂着する海洋プラスチックを燃料にして、島内の温浴施設のお湯をつくる取り組みを進めているのが長崎県対馬市です。
対馬市には毎年たくさんの海洋プラスチックごみが漂着し、その量は日本でいちばん多いといわれています。
このごみを燃料に変え、資源として活用する取り組みが進められています。
今年2月には、こうした海洋プラごみを細かくするための破砕機や圧縮して燃料化するための装置が導入されました。
これは、北海道札幌市の
株式会社エルコムのe-PEPシステムです。
今後は、燃料として燃やすためのボイラーも導入する見通しとのこと。
参考)https://www.elcom-jp.com/2022-0208
こうした企業や自治体による取り組みは、地域が抱える課題をサーキュラーエコノミーを通してチャンスに変える斬新なチャレンジだといえます。
リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへと経済モデルの大転換を図るため、こうした発想の転換が求められているのかもしれません。
私たち消費者も、自分が買おうとしている商品がどうやって作られたものなのか、少しイメージを膨らませる必要があるでしょう。
また、アップサイクルされた商品にもアンテナを張り、しっかりと選び取っていく目を養うことも大切ではないでしょうか。