こんにちは!学生インターンの西村です。
畜産を知ろう!シリーズ第二回目は「飼料」をテーマにお伝えします。
牛は何を食べるの?
牛は主に牧草のほか、トウモロコシや大麦、米ぬかを食べます。
(畜産のお仕事 農場作業のイロハ|公益社団法人 中央畜産会)
体重600kgの乳牛の場合、1日に約30kgのエサを食べ、 80〜100L、多いと200L近くの水を飲みます。 飼料(家畜のエサ)は大きく分けて、 繊維成分の多い「粗飼料」と 繊維成分が少なく栄養価の高い「濃厚飼料」に分けられます。
粗飼料には、牧草を乾燥させた乾草や、 発酵させたサイレージなどが含まれます。 サイレージは発酵により、匂いが良くなり牛が好む上に、 保存性も高くなります。
濃厚飼料には、トウモロコシや大豆、米ぬか、油粕などが含まれます。
牛は粗飼料を主食、濃厚飼料をおやつとして食べています。
牛は4つに分かれた大きな胃を持つ反芻動物(はんすうどうぶつ)です。 胃の中にすむ微生物の力を借りて食べたエサを 分解・発酵させることで栄養分として吸収します。
何度も吐き戻しと咀嚼を繰り返すことで、 硬い草をより効率よく消化できるようになります。
十分に草を食べないとこの働きが弱くなり体調を崩してしまうため、 しっかり粗飼料を食べさせることが大切です。 豚と鶏は濃厚飼料のみで育てられます。
飼料の食料自給率
飼料は大部分を輸入に頼っており、 飼料全体の自給率は25%です。
(令和元年度) 粗飼料の自給率は高く77%ですが、 濃厚飼料の自給率は12%にとどまっています。
粗飼料の元である牧草は、 牛を飼育する農家さんが自分で育てて収穫することも多いようです。
(畜産のお仕事 農場作業のイロハ|公益社団法人 中央畜産会)
輸入飼料の大半を占めるのがトウモロコシで、 その大半がアメリカから輸入されています。
〈参考資料〉 飼料をめぐる情勢|農林水産省 畜産局飼料課
輸入飼料に伴う課題
家畜用飼料に限らず、食物を輸入に頼ることの問題点は何でしょうか。
一つには食料安定供給のリスクがあります。 気候変動や大きな紛争などにより、 外国で食物の生産量が減ったり、 日本まで運ぶことができなくなったりすると、 国内の食料が不足してしまいます。
もう一つは輸送に伴う温室効果ガス排出です。 たくさんの食料を遠くの国から輸送する過程で排出される 大量のCO2は地球温暖化の一因となっています。
食料自給率の向上は、 私たちの食生活と地球環境を守るために重要な課題なのです。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%(令和元年度)ですが、 輸入された食料のうち約13%という少なくない割合を家畜飼料がしめています。
飼料の自給率はそのまま、全体の食料自給率に大きく関わってくるのです。
〈参考資料〉 知ってる? 日本の食料事情 2020 〜食料自給率・食料自給力と食料安全保障〜|農林水産省
食料自給率や飼料自給率について 以前紹介したロスゼロブログも是非ご一読ください。
正しく理解しよう! 「食料自給率」と「エネルギー自給率」のお話
食品廃棄物×飼料=エコフィード
低い食料自給率とともに、日本の食に関して課題となっているのが、 食品廃棄物(フードウェイスト)です。
食べられるのに捨てられてしまう、 いわゆる「フードロス」は年間約612万トン。 食品由来の廃棄物全体でみるとその量は2550万トンです。
食品廃棄物を有効活用する方法の一つがこのエコフィードです。
エコフィード(ecofeed)は「環境に優しい(ecology)」や 「節約する(economical)」を意味する「エコ(eco)」と 「飼料」を意味する「フィード(feed)」を合わせた言葉です。
パンくずや大豆粕など、食品製造過程で発生する副産物や、 売れ残り弁当などの余剰食品、規格外野菜などを集めて加工し、 飼料として家畜に与えます。
エコフィードで飼育した家畜から得られた畜産物及びその加工食品は、 「エコフィード利用畜産物」として公益社団法人中央畜産会から認証されます。
エコフィードには食品リサイクルだけでなく、 飼料コストの低減や肉質向上、ブランド化といったメリットもあります。
実際に鹿児島県のジャパンファームという養豚企業では、 地域の焼酎メーカーが廃棄処理に悩んでいた焼酎粕を エコフィードとして利用することで、 「薩摩麹いも豚」としてブランド化に成功しています。
他にも、ある食品製造業者では 工場から排出されたパンくずなどを飼料として再生利用し、 エコフィードで育った豚肉を小売業で販売したり、 従業員食堂で提供したりすることで食品のリサイクルループを実践しています。
〈参考資料〉 エコフィード利用畜産物認証制度|中央畜産会 食品廃棄物等の利用状況等(平成29年度推計)<概念図>|農林水産省 エコフィードをめぐる情勢|農林水産省 生産局畜産部飼料課 養豚事業について|JAPAN FARM
今回は家畜のエサをテーマにお届けしました。
生き物にとって食べることは欠かすことができない活動です。
農家の方は毎日エサを与えて、牛や豚や鶏を大切に育てています。
廃棄食品と家畜飼料をうまく組み合わせたエコフィードには、 一石二鳥どころではない、食品リサイクル、自給率の向上、 温室効果ガス削減、生産性向上、地域企業の活性化など たくさんのメリットがありました。
私たちの食事から動物の飼料まで一体で考えて、 循環させることのできるサイクルを構築することが、 これからの畜産を考える上でとても重要な鍵になります。
次回は「うんと大事なウンチの話 〜排泄物の処理と堆肥やバイオマスとしての再利用〜」をお届けします。
畜産を知ろう!③うんと大事なウンチの話。有機肥料やバイオガスとして再利用
畜産を知ろう!④動物と人と環境の健康は一つ!One Healthと薬剤耐性
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