こんにちは、サステナブルライターの山下です。
近年、台風や豪雨といった自然災害が毎年のように猛威を振るっています。
日本だけでなく世界各地でも、洪水や熱波など極端な気象による被害が発生しています。
さまざまな気候変動を引き起こすとされるのが、地球温暖化です。
今回は、地球温暖化や現状、そして今後の予測について学びましょう。
地球温暖化のメカニズムとは?
(画像出典:全国温暖化防止活動推進センター)
まず、宇宙からみた地球を想像してみましょう。
地球には太陽からの光と熱が降り注いでいます。
降り注いだ熱の一部は大気に吸収されますが、大半の約7割が宇宙へ放熱されています。
実は、大気中で熱を吸収する役割を果たしているのが「温室効果ガス」です。
温室効果ガスのはたらきによって、地球は生物が暮らすのに適した気温に保たれています。
現在の地球の平均気温は約14℃ですが、温室効果ガスがなければマイナス19℃になってしまうといわれています。
温室効果ガスというと環境に悪いイメージをもつ人もいるかもしれませんが、生物にとって欠かせない存在なのです。
一方で、温室効果ガスは地球温暖化を引き起こす原因のひとつです。
大気中に温室効果ガスが増えすぎると、太陽の熱が大気中により多く吸収されます。
その結果、宇宙への放熱が減り、地表付近の気温がより温かくなるのです。
これが地球温暖化のメカニズムです。
温室効果ガスの種類と発生源
人間の活動によって発生する温室効果ガスには、二酸化炭素やメタン、フロンガスなどがあります。このうち、二酸化炭素がもっとも多く約76%を、続いてメタンが約16%を占めます。
また、温室効果ガスの約7割が化石燃料を使うことで、1~2割が森林伐採などによって発生しています。
石油や石炭、天然ガスといった化石燃料は私たちの生活を支えるエネルギー源ですが、一方で、多くの二酸化炭素を排出するという側面も有しています。
産業革命以降、化石燃料を多く使うようになったため、大気中の二酸化炭素の濃度が増加したとされています。
地球の気温はどれくらい上がっている?
では、次に、これまでに地球の気温がどれくらい上がったかをみてみましょう。下の図は、ここ130年あまりの世界の地上の平均気温をしるしたものです。
アップダウンを繰り返しながらも、1900年以降徐々に右肩上がりとなっていることがわかります。
(画像出典:全国温暖化防止活動推進センター)
18世紀半ばから19世紀に、ヨーロッパを中心に産業革命が起こりました。
産業革命は、エネルギー源に石炭を使うようになったエネルギー革命でもあります。
このグラフに産業革命を当てはめてみると、ちょうど右肩上がりの起点となっています。
さて、このグラフは、1880年から2012年の間に地上の平均気温が0.85℃上がったと示しています。
この数字について、みなさんはどのように感じられたでしょうか?
「0.85℃も上がっている」のか「0.85℃しか上がっていない」のか、なかなか判断が難しいというのが正直なところではないでしょうか。
筆者も初めて0.85℃という数字をみたとき、どれほどのインパクトがあるのかわかりませんでした。
そこで、この数字の意味を理解するために、日本で今、どのようなことが起こっているのかをみてみましょう。
(画像出典:環境省『おしえて!地球温暖化』)
このように、気象災害や農業、漁業といった一次産業へはもちろん、私たちの健康へも大きな影響を与えています。
特に都市部は、温暖化とは別のヒートアイランド現象でさらに高温になりがちです。
ヒートアイランド現象のある都市とない郊外とでは、気温が約3℃違うというデータも報告されています。
また、豪雨災害の一方で、渇水も発生していることは意外に知られていません。
温暖化によって、豪雨と渇水という両極端の事象が引き起こされることは、ぜひ頭の片隅にとどめていただきたいと思います。
この現象は日本国内だけでなく、国境に関係なく世界中で発生します。
実は、温暖化が世界共通の課題とされる理由のひとつはここにあります。
この点については、次回の記事で詳しくお伝えしたいと思います。
今後の気温はどうなる?
現状把握をしたところで、地球の気温が今後どうなるのか予測したデータを確認しましょう。下のグラフは、2100年までの気温上昇を予測したグラフです。
最悪のケースでは最大で4.8℃も上昇するとされています。
(画像出典:全国温暖化防止活動推進センター)
この予測は、IPCCの「第5次評価報告書」によるものです。
IPCCとは「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略で、日本語では「国連気候変動に関する政府間パネル」といいます。
地球温暖化に関する文脈ではよく登場するので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
IPCCは、世界中の気象の専門家による学術的な機関です。
スイスに本拠を置き、地球温暖化問題の対策に科学的なアプローチを行っています。
こうした実績から、2007年にはノーベル平和賞を受賞しました。
IPCCでは、地球温暖化に関する評価報告書を5~6年ごとに発行しています。
2013年に発表された「第5次評価報告書」には、日本からは10人の専門家が執筆に参加しました。
上のグラフでは、「RCP8.5」と「RCP2.6」という2つのシナリオが示されています。
「RCP8.5」は温室効果ガスの排出量がもっとも多いケース、「RCP2.6」はその反対にもっとも少ないケースを想定したシナリオです。
「第5次評価報告書」では、社会や経済の動向に合わせた予測ができるように、このような4つのシナリオが設定された点が特徴です。
ちょうど2021年8月9日に、最新の第6次評価報告書が発表されたばかりです。
産業革命以降の世界の気温上昇を1.5℃までに抑えることを念頭に、気候変動や砂漠化、食糧安全保障といった多くのトピックスについて記載されると見られています。
こちらについても、後日ロスゼロブログにてご紹介したいと思います。
(参考:IPCCとは? | IPCC 第5次評価報告書 特設ページ)
今を知ることが地球温暖化対策の第一歩
今回は、地球温暖化に関するデータや現状についてご紹介しました。
現在、私たちが置かれていることをきちんと把握することは、地球温暖化対策の一歩ではないかと思います。
特に、地球温暖化に対して科学的なアプローチを行っているIPCCの評価報告書は、全世界共通の認識となりつつあり、私たちも触れておく必要があるのではないでしょうか。
次回の記事では、こうした現状を踏まえたうえで、地球温暖化が世界にどのような影響を与えるのかについて幅広くご紹介したいと思います。
地球温暖化の影響は、私たちの社会や経済に対するインパクトも相当なものであり、だからこそ世界共通の課題とされているのです。
ぜひ次回もお読みいただけると幸いです。