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地球はプラスチックスープ?意外と知らない身近な脅威 その1

公開日: 更新日:2023.12.04
地球はプラスチックスープ?意外と知らない身近な脅威 その1

 

こんにちは!大学生インターンの布川です。

これから2回にわたって、プラスチックについてお話しします。

 

突然ですが、一度皆さんの部屋の中を見回してください。

プラスチックの製品がいくつありますか?

私の部屋にはざっと50個!

このように、意識してみるとあらゆる物に使われていることが分かります。

 

昨年より日本でもレジ袋の有料化が規定され、消費者のプラスチック削減への関心は高まっていますが、まだまだ削減したと実感できるほどではありません。

 

現代では、持ち物のすべてを非プラスチック製にすることは実質的に不可能に近いです。

 

ですが、一人一人が少しずつ変化していけば全体として大きな結果がもたらされることは確かです。

本稿を、そのためのきっかけの一つにしていただければ幸いです。

 

本稿を書くにあたって、ミヒル・ロスカム・アビングさんの「プラスチック・スープの地球」という本を参考にしました。

 

かなり詳しく、かつ読みやすく写真やデータも豊富に掲載されています。

プラスチック問題に関心がある方にはおススメです。

(ポプラ社 ミヒル・ロスカム・アビング「プラスチックスープの地球」

 

プラスチックのスプーン

地球にあふれるプラスチック

そもそもプラスチックは、いつからこんなに生産が盛んとなったのでしょうか。

 

始まりは、第二次世界大戦後の経済発展でした。

 

低価格で多様な種類の生産が可能なだけではなく、軽量で水にも強く、中身の鮮度も保てる、正に「夢の素材」としてデビューを飾ったのです。

 

それ以来世界のプラスチック生産量は増大し続け、2015年には、3億8100万トンにもなりました。

 

プラスチック生産量グラフ

(“Plastic Pollution” Our-World in Data https://ourworldindata.org/plastic-pollution)

 

プラスチックに代表されるように、今や地球は人工的な物質であふれかえっています。

 

人間が地球に対して多大な影響を及ぼす近現代のことを地質学者たちは「人新生」と名付けました。

 

氷河期と間氷期を繰り返す「更新世」から、氷河期が終わり地質的に安定した「完新世」を経て、「人新生」へと突入したと言うのです。

 

これはすなわち、人間の活動が氷河期のような強大な自然現象と同じくらいの規模で地球に影響を与えている、ということを意味します。

「人新生」が終わった後にどんな地球になるのか正確な予測はできませんが、今とは全く違う、人間にとっては過酷な環境が待ち受けていることは確かです。

 

海辺の夕焼けとゴミ

プラスチックスープで暮らす私たち

さて、プラスチックの話に戻ります。

海洋研究科のムーアさんは1997年に海上にただよう無数のプラスチック片にショックを受け、「プラスチックスープ」という言葉を思いつきました。

 

「スープ」と言っても水中のみを指すのではなく、地球のあらゆる部分を含みます。

太陽光や微生物、波動によって分解されたプラスチックは地球を循環し、空気や土壌の中にも紛れていくからです。

 

実際にパリの空気中を調べた結果、一日で最大 355個 / 1㎡ ものマイクロファイバーが見つかりました。

 

今や地球全体が「プラスチックスープ」であることは疑いようのない事実なのです。

 

 

ビニール手袋に入ってしまう魚

環境への影響

では、このような大量のプラスチックは環境にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

最も深刻なのは、生態系への影響です。

 

皆さんも、人工網に絡まってしまった鳥や、ビニール袋を食べてしまったウミガメなどのショッキングな写真を目にしたことがあるのではないでしょうか。

ミッドウェー諸島で行われたある調査では一羽の死んだ鳥の中から558個ものプラスチック片が発見されました。

 

また、牡蠣を対象にした別の研究ではプラスチックを誤食した個体は生殖機能に劣る、という結果も確認されています。

 

つまりプラスチックは現在存在する動物はもちろん、彼らの子孫までを危険にさらしているということです。

我々の活動が他の種族を脅かしている、という事実は重く受け止めなくてはなりません。

 

ペットボトルをかじる赤ちゃんサル

人間への影響

もちろん人間も動物ですから、プラスチックによる健康被害は免れません。

 

なんと市販のミネラルウオーターの中からも検出されるくらい、私たちの日々の暮らしはプラスチックに侵されています。

生活の中で身体の隅々まで入り込んだプラスチックが実際にどのようにな症状を引き起こすのか、まだはっきりとした断定はできていません。

 

しかし例えば、プラスチックの添加物には人間のホルモンバランスを乱す物質があることや、PCB(ポリ塩化ビニル)などは体の様々な組織や脂肪にたまり

病気を引き起こす可能性があることは確認されています。

 

他にも生殖機能や胎児、乳がんなどへの影響も示唆されており、プラスチックは我々の身体をむしばむ、「夢の素材」からはほど遠い物質であることは確かです。

人体に影響はない、はウソ。Gyoppy!)

 

プラスチックから水を注いでいる

 

こうした直接的な人間の身体への影響に加え、プラスチックは、間接的にも人間に害悪を与えます。

 

国連の推定によると、アフリカ大陸の国々で捨てられるごみのうち適切に処理されているものは10%ほどだと言います。

残りの90%は街中で燃やされたり、あるいは海や道ばたに捨てられています。

そうした街はいつも煙で覆われ、プラスチックが詰まった排水溝のせいで下水の洪水が起こります。

 

その結果、衛生状態が悪くなり人々の健康に害を及ぼすのです。

 

大量の廃棄ビニールに囲まれた人

 

また、海流の関係で東南アジアの沿岸部や南アフリカのビーチにはゴミが流れ着きやすくなっています。

こうした地域は観光業を生業にしていることも多く、経済的にも人間にダメージを与え得ると考えられます。

 

さらに、プラスチックの誤食によって生態系が壊れるとそれに伴って食物連鎖が狂います。

 

人間は食物連鎖の頂点に属するので、ピラミッド構造の下の部分が崩れてしまうと必然的に上の部分も崩れてしまいます。

 

そこで敗者となるのは低所得者であり、限られた食べ物はお金持ちが独占することになります。

 

 

たくさんのゴミが漂着している

 

このように、プラスチックスープは人間を含む動物の身体に直接影響するだけではなく、経済活動や食生活など、あらゆる分野でダメージを与えているということが分かると思います。

 

以上、本稿では地球にあふれるプラスチックが環境や私たち人間に与える影響について考察しました。

 

次稿では、プラスチックを減らす様々なアイデアを紹介していきます。

皆さんの生活のちょっとしたヒントになるような実践しやすいアイデアも満載でお届けします!

 

 

 

 

 

 

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