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畑で生まれる“隠れ食品ロス”とは? 私たちの知らない農業のお話

公開日: 更新日:2023.12.22
畑で生まれる“隠れ食品ロス”とは? 私たちの知らない農業のお話

(画像出典:Photo by Markus Spiske from Pexels

 

こんにちは、サステナブルライターの山下です。

 

今回は、畑で生まれる食品ロスを考えてみましょう。

実は、私たちのみえないところで多くの食品ロスが発生しています。

毎日の食卓を支えてくれている農業にひそむ“隠れ食品ロス”についてお届けします。

 

 

農業で発生する食品ロスとは?

野菜を売っている市場

(画像出典:Photo by Daria Shevtsova from Pexels

出荷できるか否かは「出荷規格」で決まる

私たちが普段買い物をする店先には、形のきれいな野菜が並んでいます。

曲がったキュウリや短いニンジンを見かけることは、ほとんどありませんよね。

 

その理由は「出荷規格」をクリアした野菜だけが店頭に並んでいるから。

「出荷規格」とは、野菜の大きさや重さでランク付けをして価格を決めたり、出荷できるものとできないものに分けたりするための基準です。

 

この基準をクリアしない野菜は、市場に出回ることはありません。

 

「出荷規格」とは、もともと国が定めたものでした。

野菜の大きさや重さをそろえて出荷、流通しやすくするため、昭和45年から「野菜の標準規格」として適用されてきました。

 

しかし、大きさや重さの選別や箱詰め・袋詰めの手間がかかることから、平成14年に廃止。

現在は、それぞれの地域が独自に規格を設けています。

 

ところが今度は、地域によってバラバラの規格が農家のみなさんを悩ませることに。

地域によっては規格が細かすぎるなど、収穫のあとの作業にも手間がかかっています

 

規格外の野菜はどうなるの?

出荷規格にあてはまらない野菜は、残念ながら出荷することができません

 

農家のみなさんが自宅で食べたり知人に配ったりすることはありますが、それでも余ってしまったものは捨てるしかないのです。

 

畑の隅にこんもりと規格外野菜の山ができているという悲しい場面を目にすることもあります。

 

豊作で野菜がとれすぎたときにも、同じことが起きます。

市場へ大量に出荷すると、野菜の値段が極端に下がる値崩れにつながってしまうのです。

普段は1キロ500円の野菜が数十円でしか買ってもらえないと、せっかく出荷しても農家にはもうけがありません。

 

豊作の野菜を一部だけ出荷すると、多くの野菜は余ってしまいます。

結果的に残ってしまった、行き場のない野菜は捨てるしかありません

 

 

規格外野菜は、日本の「食品ロス」としてカウントされない

日本の食品ロスの現状

 

まさに、この捨てられた野菜たちが、見えない食品ロスなのです。

 

農林水産省が発表している平成29年の食品ロスは、約612万トン。

ところが、この数字には規格外で捨てられた野菜は含まれていません

含まれているのは、食品製造業や外食産業などの「食品関連事業者」と、私たちの「一般家庭」から生まれる食品ロスです。

 

収穫のときに捨てられた農産物が食品ロスとカウントされないのは、農業だけでなく漁業の場合も同じです。

漁の網にかかっても出荷できない小さな魚は捨てられてしまうケースがほとんどです。

 

実は、生産地や生産者から発生した食品ロスがどれくらいあるのかは、まだしっかりと調査されていません。

日本には、こうした“隠れ食品ロス”が数多く存在しているのです。

 

(出典:農林水産省ウェブサイト「食品ロスとは」https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html

 

 

世界ではフードロスはどうとらえられている?

畑とトラクター

(画像出典:Photo by Brett Jordan on Unsplash

世界のキーワードは「サプライチェーン」

世界では、フードロスはどのように考えられているのでしょうか。

世界の食料問題に取り組む国連食糧農業機関(FAO)が発行した最新の『2019年版世界食料農業白書』によると、このように記載されています。

 

『本白書は、食料のロスと廃棄を「フードサプライチェーンを通じて食料の量的または質的な価値が減少すること」と定義している。

経験的には、「食料のロス」は、収穫/屠畜/漁獲後から小売の直前段階に至るまでのフードサプライチェーンの途上で発生するものとみなされる。

他方、「食料の廃棄」は、小売・消費段階で発生する。』

 

つまり、フードロスは収穫や漁獲という段階から発生するという考え方です。

日本の定義とは明らかに違います。

もし日本がFAOと同じ考え方でフードロスを計算しなおせば、現在の612万トンよりさらに多くのフードロスが存在することでしょう。

 

ちなみにFAOは2020年から、毎年9月29日を「国際食品ロス・廃棄物認知デー」と設定しています。

 

フードロスや食品廃棄物について、より多くの人に知ってもらうために専用のウェブサイト(英語)もオープンしました。

(参考:http://www.fao.org/platform-food-loss-waste/en/

 

(出典:FAO『2019年版世界食料農業白書』

 

 

“隠れ食品ロス”を減らすために、私たちができること

ミニトマトを手渡す人

(画像出典:Photo by Elaine Casap on Unsplash

地産地消で無駄なく、おいしく

“隠れ食品ロス”を含めたすべてのフードロスを減らすために大切なことは、まず地産地消です。

 

地元でつくられた野菜やとられた水産物を選ぶことは、無駄なく消費するうえでとても重要です。

 

新鮮な野菜や魚が目の前にあるのに、遠く海外から運ばれてきたものを選んだ結果、地元産品が捨てられてしまうなんて、とても悲しいことだと思いませんか?

 

先ほどの『2019年版世界食料農業白書』によると、生産地で生まれる食品ロスを減らすことには“もったいない”の解決に加え、環境にもよい影響があります。

 

耕作につかう水資源の節約や土地の保全につながるだけでなく、温室効果ガスやプラスチックごみの削減にも効果的だとされています。

 

 

規格外野菜を買い取って販売する、新たな取組み

2019年10月に設立された、一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチさんの「チバベジ」では、台風などで被災し出荷できなくなった野菜を買い取って販売しています。

きっかけは同年9月に日本じゅうを襲った台風15号でした。

千葉県では停電が長引くなど大きな被害が発生し、農家のみなさんも被災してしまいました。

 

「チバベジ」では、農家の希望する価格で野菜を買い取り、農家を応援する仕組みをつくっています。

千葉県を中心にスタートした『農家を地域で支える』という取組みですが、いま全国に活動の輪が広がりつつあります。

 

(出典:一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチ「チバベジ」ウェブサイト

 

 

まとめ

たくさんのリンゴ

(画像出典:Jill WellingtonによるPixabayからの画像)

 

農家のみなさんにとって、これまでの努力が実る収穫は、本来うれしい出来事のはず。

丹精込めて育てた野菜が出荷できないだけでなく、捨てざるをえないなんて、とても悲しいことです。

 

私たち消費者にも、規格外野菜の問題解決のためにできることはあります。

まずは、規格外野菜という存在を知ること。

野菜の形や大きさが多少ふぞろいで個性的でも、受け入れる気持ちをもちましょう。

 

野菜は自然の産物、私たちと同じようにそれぞれ個性があって当たり前なのです。

 

「チバベジ」さんの『農家を地域で支える』という考え方こそ、まさに地産地消の極意。

食卓を支えてくれている生産者のみなさんを、今度は私たちが買い物という意思表示で支える番ではないでしょうか。

 

 

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この記事を書いた人

サステナブルライター 山下

電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。