衣服や日用品を捨てることは、江戸時代の人々には考えられないことでした。
特に、高価だった着物は、何度も修理され、異なる用途で再利用されました。古くなった着物の布は、帯や袋物、さらには手ぬぐいや風呂敷に生まれ変わりました。
また、小物やアクセサリーも、古くなれば部品として再利用されるなど、資源の無駄を極力避ける工夫が行われていました。
江戸時代の衣類の基本
(このブログの一部画像はOpenAI社が開発する「DALLE3」を使用しています。)
衣類
江戸時代の代表的な衣類は「着物」であり、男女ともにこれを日常的に着用していました。着物のデザインや素材は、身分、季節、行事に応じて異なりました。
そのためその色や柄で階級がわかりました。上流階級や武士階級は、豪華で色鮮やかな着物を好む傾向がありましたが、江戸初期には華美な装いを禁じる法令も出されていました。
衣類は季節や用途に応じて、絹、綿、麻、羊毛などの素材が使用され、「江戸紫」や「江戸青」など、特定の色が流行した時期もありました。
男性の着物や袴、羽織は一般的に地味な色やデザインで、女性の着物や羽織はより華やかで柄も豊かでした。
子供の衣類も成人のものとは異なり、特有のデザインや色彩が用いられました。
小物・装飾品
草履や下駄といった足元も重要で、用途や場面に応じて適切なものが選ばれました。
また、帯や帯締め、髪飾りなど、アクセサリーや装飾品も重要な役割を果たしており、それによってもその人の社会的地位やセンスが伝えられました。
江戸時代の衣服の知恵:季節を感じる着替え
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日本の四季は、春夏秋冬と鮮明に区別され、その独特のリズムは長い間、日本人の生活や文化に深く根付いています。
この四季の変化は、衣服や食文化、風物詩としての行事や祭りなど、多くの面で表現されてきましたが、特に衣服の選び方において顕著に現れています。
素材選びで体感する季節の移ろい
江戸時代の日本人は、季節の変わり目を感じるための一つの手段として、衣服を通じてその変化を体感していました。絹、麻、綿といった天然繊維は、それぞれが持つ特性により、季節の変化とマッチしています。
夏には、暑さを和らげるための涼しい麻の着物や、通気性の良い薄手の絹の着物を好んで身に纏い、暑さを和らげることができました。一方、冬には、絹や綿を使用した重ね着で、体温を逃がさないようにしていました。また寒さをしのぐための暖かな綿入れの衣服や、厚手の羽織物を選ぶことが一般的でした。
春や秋の微妙な気温の変化にも、それぞれの時期に適した衣服が用意されていました。これにより、一年を通じて、自然の中での生活がより快適になるだけでなく、季節の美しさや移り変わりを感じる喜びも増していたのです。
このように、日本の四季と衣服の関係は、日本人が自然のリズムと共に生きるという伝統的な価値観を物語っていると言えるでしょう。
色と柄で感じる四季の魅力
江戸時代の衣服、特に着物は、季節の変化と深く結びついており、その美しさや風情を豊かに表現していました。
春には桜や蝶を象徴とする淡いピンクや緑の色彩、夏には青海波や金魚、蝉といった爽やかな青や白、秋には紅葉や月を感じさせる落ち着いた紅や黄色、そして冬には雪や松竹梅、深みのある紺や黒といった色と柄が織りなす美しいデザインが豊富に用いられていました。
またデザインの面でも非常に多彩でした。季節の移り変わり、風景、動植物など、日常のさまざまな要素がデザインに取り入れられ、それぞれの地域ごとにもオリジナルの柄や色が生まれました。また、家紋や家の格式を示す柄も存在し、それらを身につけることで、身分や家柄をアピールすることもできました。
これにより、衣服を通じて季節の移り変わりや日本の自然の魅力を身近に感じることができ、四季それぞれの風情を楽しむ文化が根付いていたのです。
衣替えと身の回りの変化
江戸時代において、衣替えは単に服を変えるだけでなく、生活の中での大切な行事として位置づけられていました。季節の変わり目には、衣服はもちろんのこと、布団や寝具、日用品まで変えることが一般的でした。
特に、日本独特の湿度の変動や気温の変化に対応するため、春夏用と秋冬用の衣装を用意し、それに合わせて衣替えを行っていました。記録によると、当時の家庭は春と秋の2回、一年に平均50着近くの衣服を衣替えしていたと言われています。
これは、気候の変化に適応し、衣服を長持ちさせるための賢明な方法でした。
これにより、生活全体が季節に合わせてリフレッシュされ、新しい季節を迎える準備が整えられました。
江戸時代の持続可能な衣料文化
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再利用の智慧:古布の新たな生命
日本の江戸時代は資源が限られていたため、古くなった衣服や布を捨てることは希で、古布を再利用して新しい衣服や小物を作る技法が発展し、再利用の文化が根付いていました。
古布や着物の端切れ、使用済みの帯などは風呂敷やふきんといった日常品へと再生されることが一般的でした。また、古い衣服は部位ごとに再利用され、新しいデザインや用途のアイテムに生まれ変わる技法が日常の中で活用されていました。
リメイクの技:古きを受け継ぎ新しきを生む
着物や帯は、豊かな柄やデザインで知られていますが、それらが古くなったとき、簡単には捨てられないため、リメイク文化が発展しました。
古い着物から切り取った部分を他の着物に縫い付けて新しいデザインを生み出したり、古くなった部分を新しい布で切り替えたり、着物の柄や色を変えることで、新たな魅力を持つ衣服が創出されました。また、古い帯や布から刺繍や装飾を取り入れ、新しいアイテムや家具のカバーとしての再利用も行われていました。
このようなリメイク技法は、古いものに新たな価値を与え、独自のファッションを生み出す原動力となり、この工夫と技術は、持続可能な文化の中核として位置づけられていました。
繕いの美学:寿命を延ばし、新たな価値を見出す
江戸時代の人々は、衣服の小さな破れや汚れがあっても捨てず、繕いの技法で寿命を延ばす工夫をしていました。「さしこ」という手法では、綿を挟みながら縫うことで衣服を補強し、寿命を伸ばしていました。
繕いの跡は、単なる修復ではなく、新たなデザインや模様としての価値があり、衣服の歴史や物語性を感じることができる独特の美しさが楽しまれていたのです。
江戸時代の生活の知恵は、現代のサステナビリティの取り組みに照らし合わせると、驚くほど先見の明を持っていたと感じられます。
季節の移ろいを深く感じることで、自然との一体感や、ものづくりへの尊重が生まれました。衣服は単なる日常のツールではなく、文化や歴史、そして環境への思いやりを結びつける大切な要素となっていました。
古布を再利用し、リメイクの技術で新たな命を吹き込むこと、繕いを通してものの寿命を延ばすこと、これらは私たちが学ぶべき持続可能な生活のヒントと言えるでしょう。古き良き時代の知恵を、新しい未来へとつなげていきましょう。
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