現代の社会において、若者の政治参加は非常に重要なテーマとなっています。
20代の投票率の低さは、若者が政治に対する関心を失っている象徴とも言えます。
多くの若者は選挙に行かない理由として時間の制約や政治への興味喪失を挙げています。投票率を上げるためには、選挙の手続きを簡素化し、政治教育の充実が求められます。さらに、若者が政治に興味を持ち、選挙に積極的に参加する社会的な動きが必要です。
今回は20代の投票率に焦点を当て、若者が投票へ行かない理由やSNSがZ世代の投票行動にどのような影響もたらすのかなどを検証し、投票率を向上させるための施策について考えていきます。
他の年代と比較した若者の投票率
世代別の投票率
2022年の衆議院選挙の投票率は、55.93%でした。この投票率は、戦後日本の衆議院選挙では1972年以来、最も高い水準です。しかし、依然として欧米諸国に比べると低い水準です。
この投票率を年齢層別に比較すると、以下のようになっています。
- 10歳代: 43.21%
- 20歳代: 36.50%
- 30歳代: 47.12%
- 40歳代: 54.72%
- 50歳代: 63.34%
- 60歳代: 70.41%
- 70歳以上: 74.17%
20代の投票率は36.5%、30代の投票率は47.12%となり、20代は全ての年代の中で最も低い投票率でした。(参照:総務省「目で見る投票率」)
対照的に、60代以上では70%を超える高い投票率を示しています。
この差は、政治への関心や選挙に対する理解度、また生活環境などによるものと考えられます。
若者の投票率と他の年代の投票率との差の影響
若者の投票率が低いという現象は、政治が若者の声を反映しにくい状況を生む可能性があります。
年齢層ごとの投票率の差は、政策の方向性に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、高齢者の投票率が高いと、年金や医療、介護などの高齢者を中心とした政策が優先される傾向にあります。
逆に若者の投票率が低いと、教育や就労、子育てなど若者を対象とした政策が見過ごされる恐れがあります。
若者の政治への関心はどの程度?
若者が選挙へ行かない理由
20代の投票率はここ10年間で一度も40%を超えたことがありません。
選挙に行かない理由は、人によってさまざまですが、2022年2月に総務省が発表した調査によると、若者が選挙に行かない理由のランキングは、以下のとおりです。
1位:予定があった、急用が入った
2位:時間がない/忙しい
3位:投票したい候補者、政党がいない
4位:興味がない
5位:意味がない
6位:選挙や政治がよくわからない
このように若者が投票に行かない=若者の投票率が低い主な理由は、日常の忙しさ、政治に対する興味の無さ、支持する候補がいないこと、そして政治の複雑さによる理解の不足といえるでしょう。
また、20代の若者に多い理由として、「住民票と違うところに住んでいる」というものがあります。
進学や就職で転居したものの、住民票を移していないために、投票券が届かなかったり、今の居住地で投票できなかったりすることがあるようです。
この場合は、不在者投票をすることで解決できます
ニュースやSNSで話題になる政治の意味と若者の反応
全国青少年意識調査によれば、約60%の若者が政治に対する関心を「ある」と回答しています。
若者が政治に接する手段として、テレビや新聞のニュースだけでなく、SNSが増えています。
SNSではリアルタイムに情報が共有され、その場で意見を交換することが可能なため、若者の政治参加の形態を変化させています。
一方で、情報の信憑性や公平性についての議論もあるため、批判的な視点を持つことが求められます。
また、日本労働組合総連合会の調査では、若者の約半数が政治に関する情報をSNSで得ていることが明らかになっています。
若い世代が注目する政策や政治家
若者が政治に関心を持つ際、特に注目する政策の領域は教育、雇用、社会保障などです。
これらは若者自身の生活を直接影響する重要なテーマであり、これらの政策に対する政治家の姿勢を評価することで、自分たちの生活をより良くするための手段として政治を捉えています。
また、公明党の2020年「若者の政治意識調査」によると、政策に関心を持つ若者の約7割が、政治家の人柄や信頼性にも注目しているとの結果が出ています。
投票行動とSNSの関連性
SNSがZ世代の投票行動に影響を与える?
SNSは若い世代の政治に対する意識や投票行動に大きな影響を及ぼしています。
政策情報や候補者のプロフィール、選挙日程など、必要な情報が手軽に得られることで、政治への興味や理解が深まる可能性があります。
自身が興味を持った記事や動画を投稿し、またはリツイート・シェアすることで、彼らの関心や見解を示します。
また、候補者の政策をサポートする投稿を行うことで、積極的に政治参加を行う若者もいます。
一方で、フェイクニュースの拡散など、情報の信頼性について懸念が指摘されています。
ある調査では若者の半数以上がSNS上の政治的な情報を「信じにくい」と感じていると報告されており、情報源としてのSNSの課題も浮き彫りになっています。
SNSを通じた候補者の広報活動
SNSを通じた候補者の選挙活動は、2013年に公職選挙法が改正されてから解禁されました。
それまでは、インターネット上での選挙運動は制限されていましたが、現在では候補者や政党だけでなく、有権者も自由にネットで選挙に関する情報発信や交流ができるようになりました。
SNSを通じた候補者の選挙活動には、以下のようなメリットがあります。
- 広範囲の有権者にリアルタイムで情報を届けることができる
- 有権者と直接対話やフィードバックを行うことができる
- 低コストで効果的な宣伝活動を行うことができる
- 若年層やインターネット利用者の関心や投票意欲を高めることができる
一方で、SNSを通じた候補者の選挙活動には、以下のような注意点もあります。
- 公職選挙法や著作権法などの法律を遵守することが必要である
- 誤った情報やデマ、誹謗中傷などの不正な発信に対処することが必要である
- SNS上の情報だけではなく、他のメディアや実際の演説なども参考にすることが必要である
- SNS上の情報に惑わされず、自分自身で判断することが必要である
学校教育が投票行動に与える影響
公民教育のカリキュラムと若者の投票行動
教育は個々の投票行動に大きく影響を与える要素の一つです。
特に、公民教育のカリキュラムは、若者が政治に参加するための道具となり得ます。
それは、政治的な議題や候補者についての知識を提供し、公共の問題について考え、討論するスキルを育てます。
最近の調査では、公民教育を受けた若者の約60%が投票に参加する意欲があると回答しています。
また、ディベートやクラス討論などの授業活動は、異なる視点を理解し、自身の意見を形成する能力を育てます。
これらの経験は、学生が政策問題に深く関与するきっかけとなり、投票という形で自身の意見を表現する重要性を理解させます。
教育レベルと投票率の間の関連性
教育レベルと投票率には密接な関連性があります。
一般的に、教育レベルが高いほど投票率も高くなるとされています。
これは、高い教育レベルを持つ人々が、政治的な情報を理解し、その影響を受ける能力が高いためと考えられます。
事実、OECD諸国の調査によれば、大学卒業者の投票率は高校卒業者よりも10ポイント以上高いと報告されています。
オンライン投票が投票率向上につながる?
日本のオンライン投票の現状
日本でオンライン投票は、一部の地方自治体で試験的に行われたことがありますが、国政選挙ではまだ実施されたことはありません。
オンライン投票を実現するには、法的な整備や技術的な安全性や信頼性の確保など、様々な課題があります。
法的な整備としては、公職選挙法の改正が必要です。現在の公職選挙法では、電磁的記録式投票制度(電子投票)については、地方自治体の長が総務大臣の承認を得て実施することができますが、インターネット投票については規定がありません。ネット投票を可能にするためには、公職選挙法にネット投票の定義や条件や手続きなどを明記する必要があります。
技術的な安全性と信頼性としては、不正やハッキングや障害などを防ぐための対策が必要です。
インターネット投票では、有権者の本人確認や秘密保持や不可逆性などを担保するために、高度な暗号技術や認証技術や監査技術などを用いる必要があります。また、インターネット投票システムの開発や運用や管理に関する基準やガイドラインも策定する必要があります。
これらの課題に対しては、総務省内に設置された「投票環境の向上方策等に関する研究会」で検討が進められています。
また、在外邦人のインターネット投票については、2020年に公職選挙法が改正されて可能になりました。これは、在外邦人の投票率向上や不在者投票制度の見直しを目的としたものです。
オンライン投票で投票率が上がった事例
世界で唯一全国民にオンライン投票を可能にしているエストニアでは、オンライン投票の割合は40%を超える水準まで上昇しましたが、投票率自体は60%程度で安定しており、若年層の投票率も他の年代より低いままです。
また、一部の州や自治体でオンライン投票を導入しているスイスやノルウェーでも、オンライン投票の導入による投票率の大幅な変化は見られませんでした。
スイスでは、オンライン投票を導入した州では他の州よりも若者の投票率が高い傾向にありますが、それでも全体的な水準は低く、オンライン投票だけでは十分な効果が得られないと考えられています。
オンライン投票を実施することで若者の投票率が上がった事例としては、フランスの在外フランス人向けのオンライン投票が挙げられます。2012年に行われた在外フランス人議員選挙では、オンライン投票を導入した結果、18歳から24歳までの若者の投票率が約30%から約50%に上昇しました。
しかし、この事例は在外フランス人に限られたものであり、国内の選挙ではまだオンライン投票は実施されていません。
投票率を上げるためには?
投票率を上げることはSDGsの何番に該当する?
投票率を上げることは、SDGsの中でも特に目標16に該当すると考えられます。
目標16は「公正、平和かつ包摂的な社会を推進する」というもので、特にターゲット16.7の「決定過程における包摂的で参加型で代表的な意思決定をあらゆるレベルで確保する」に関係しています。
投票は、民主主義社会において、市民が政治に参加し、自分たちの意見や利益を反映させる重要な手段です。投票率が高ければ高いほど、政治は包摂的で参加型で代表的なものとなります。逆に、投票率が低ければ低いほど、政治は一部の人々や利益に偏り、不公正や不平等が生じやすくなります。
投票所のアクセシビリティの向上
選挙のアクセシビリティは、若者の投票率に直接的な影響を与えます。
選挙所の利便性や所在地、開票時間などが若者の投票行動に影響を与えるとされています。
近年の調査によると、投票所までの距離が長いほど投票率が低下する傾向が見られ、これは特に移動手段に制約がある若者にとって大きなハードルとなっています。
一部の地域では、カフェや商業施設内に設置された投票所が若者から高い評価を得ています。
これらの環境は、若者が選挙に参加する意欲を引き出す役割を果たしています。
若い世代が有利になる世代間投票制度の導入
世代ごとの人口分布によって一票の価値が変わる投票制度を、世代間投票制度(Generational Voting System)と言います。
世代間投票制度では、各世代に1票ずつではなく、各世代の人口比率に応じて一票を配分します。例えば、若い世代の人口比率が50%であれば、若い世代は1票につき2票の価値を持つことになります。
世代間投票制度は、少子高齢化が進む日本において、若い世代の政治的発言力を高めるために提案されています。少子高齢化が進むと、高齢者の人口比率が高まり、若い世代の人口比率が低下します。そのため、現在の一票一票の制度では、若い世代の意見が反映されにくくなります。
世代間投票制度では、各世代の人口比率に応じて一票を配分することで、若い世代の政治的発言力を高めることができます。ただし、世代間投票制度には、若い世代が高齢者よりも優遇されるという批判もあります。
また、人生の残り時間が長いほど、政策から受ける影響が大きくなる余命投票という考え方もあります。限界余命(例えば125歳)から自分の年齢を引いた数字が票数となり、人口分布に関係なく各世代の意見が均等に反映される票の数え方です。
今現在、世界には世代間投票制度を導入している国はありませんが、選挙や政治における世代間格差を是正することは大切な課題になっています。
18歳選挙の導入
2015年に公職選挙法が改正され、2016年の参議院選挙から18歳と19歳の若者も投票権を持つこととなりました。
日本における18歳選挙の導入背景は、主に以下の点に起因しています。
若者の社会参加の促進:多くの先進国では18歳から投票が許されており、日本も国際的な潮流に沿った形で若者の政治参加を促す必要があるとの声が高まっていました。
成人年齢との整合性:日本では18歳から多くの法的義務や権利(契約の結び方や結婚など)が生じます。これに合わせて、選挙権も18歳からとすることが求められてきました。
若者の政策への影響:若者が直面する課題や未来に対する視点を、政策決定のプロセスに取り込むため、若者の意見を選挙という形で反映させる必要があったため。
意識の変化:従来は若者の政治への関心の低さや判断能力への懸念が18歳選挙の導入をためらわせていましたが、時代の変化とともにこれらの視点が再評価されるようになったため。
この改正により、より多くの若者が政治に関心を持ち、社会の未来を形成する一員としての役割を果たすことが期待されています。
選挙は私たち一人一人の大切な権利です。
みなさんも選挙を通じて積極的に政治活動に参加しましょう。
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