なぜ、カナダの食料自給率は高いのか?
今回は、地理的・気候的特性から政策・農業技術まで、カナダの高い食料自給率を支える要素について探求していきます。
また世界とカナダの関係、今後の気候変動に対する対策を知ることによって、持続可能な国家、食の安全保障などについても考えていきましょう。
カナダの食料自給率と世界ランキング
カナダの食料自給率は?
農林水産省の「食料需給表」によると、カナダの2018年度の食料自給率は233%となっており、世界で一番食糧自給率が高い国です。
2位のオーストラリアの169%と比べてもかなり差をつけており、日本の食料自給率の37%とは比べ物にならない程、高い食料自給率を維持しています。
食料自給率が100%以上あるってどういうこと?
食料自給率とは、国内で生産された食料のカロリーが、国内の人口が必要とするカロリーに占める割合のことです。
食料自給率が100%以上あるということは、国内で生産された食料のカロリーが、国内の人口が必要とするカロリーを上回っているということです。
食料自給率が100%以上ある国は、オーストラリア、カナダ、アルゼンチンなどのように、世界的に見ても国土面積が広く、農業に適した土地や水資源が豊富な国が多いです。これらの国では、穀物や畜産物などの食料を大量に生産し、輸出も盛んです。
カナダの食料自給率の背後にある要因
食料自給率が高い理由
カナダの食料自給率が高いとされる理由は、その国土の豊かさと気候が大いに関与しています。
カナダは世界で2番目に大きな国土を持つ国で、その範囲は極地から穏やかな温帯まで広がっています。この広大な土地は、異なる種類の作物や家畜を同時に育てることを可能にし、多種多様な食物の生産に対応しています。
また、カナダの気候は地域によって大きく異なります。肥沃なプレーリー地帯では穀物が豊富に生産され、温暖なブリティッシュコロンビア州ではフルーツやワインの生産が盛んです。これらの気候の違いが、広範な食品の生産を可能にし、一年を通して食品供給を安定させています。
これらの条件がカナダの高い食料自給率を支えているのです。
人口と食料
カナダの人口は約3,800万人(2023年時点)と世界的に見ても中規模である一方、国土面積は世界第2位と広大です。つまり、一人当たりの国土面積が非常に大きいため、広大な農地を利用して十分な食料を生産できるのです。
さらに、カナダは世界第5位の農業輸出国であり、特に小麦の輸出では世界第2位(2022年時点)を誇ります。国内での食料消費量を大きく上回る生産量を誇るカナダの農業は、高い食料自給率を維持する上で不可欠な存在と言えるでしょう。
カナダの土地利用と食料生産:自給率を支える農地管理
土地利用パターン
カナダの土地利用パターンは、食料生産に重要な役割を果たしています。
カナダの国土面積は約997万平方キロメートルで、これは世界全土の約7%を占めています。しかも、その内約7%が農地として利用されており、広大な土地を食料生産に活用しています。
この規模の農地が、多様な種類の作物を大量に生産し、高い食料自給率を支える一因となっています。
土地利用と食料自給率
土地利用と食料自給率の間には密接な関係があり、適切なバランスを保つことが必要です。
過度な土地開発は環境問題を引き起こす可能性があり、持続可能な食料生産に影響を与えるかもしれません。例えば、過剰な農薬使用は土壌の質を低下させ、長期的な食料生産能力を損なう恐れがあります。
カナダもこのような問題を抱えつつ、食料自給率を維持するための努力を続けています。
カナダの農業ポリシーと食料自給率の関係性
農業政策
カナダの農業政策は、農業・農産食料省の手によって大きく牽引されています。
政策の主要な焦点は生産者の利益を保護し、生産者が国内外の市場で競争できるようにすることです。これには、生産者向けの補助金や市場情報の提供、食料安全基準の確立などが含まれます。
このような政策は、カナダの農業の持続可能性を確保し、結果的に高い食料自給率を維持するために不可欠です。
家畜産業
家畜産業はカナダの農業の重要な部分であり、食料自給率にも影響を与えています。
カナダは世界第3位の豚肉輸出国であり、豚肉生産は全農業出荷額の約20%を占めています。また世界第6位の牛肉生産国であり、国内の消費量を大きく上回る生産量を誇っています。広大な放牧地と豊富な飼料生産能力により、カナダは高品質な牛肉を大量に供給しています。
しかし、大規模な家畜産業の維持には大量の飼料供給が必要で、これが新たな課題となっています。
気候変動とカナダの食料自給率:影響と対策
農業全体への影響
カナダの農業全体に対する気候変動の影響は、大変深刻なものです。農作物生産量は、2000年から2010年の間に約10%減少し、家畜生産量も約5%減少しています。
気候変動による極端な天候パターンは、農作物の生産量や家畜の生育に影響を及ぼし、結果的に食料自給率にも影響を与えます。旱魃や洪水は作物の生産に大きな打撃を与え、これらのリスクは今後増大する可能性があります。
気候変動対策
気候変動対策は、カナダの食料安全保障にとって重要な課題となっています。
カナダ政府は、温室ガス排出の削減や気候変動への適応策を推進しています。具体的には、農業生産のカーボンフットプリントを低減する技術の開発や普及、気候変動に強い作物の育種などが挙げられます。
これらの取り組みは、将来の食料自給率の維持に向けた重要なステップとなるでしょう。
カナダの農業技術:効率的な生産で自給率を維持
自動化とデジタル化
カナダの農業は高度な技術に支えられています。
自動化とデジタル化が進み、GPSガイドによる精密農業やドローンによる作物監視など、最新のテクノロジーが導入されています。これらの技術進化は作物の生産効率を大幅に向上させ、年間を通して一定の食料供給を可能にしています。
これにより、カナダの食料自給率は維持され、さらに向上する可能性を秘めています。
農地管理
カナダの農地管理もまた、技術の進化に伴い変化しています。
適切な土地利用計画や灌漑技術、土壌管理方法の改良により、農地の効率的な利用が可能となりました。たとえば、サテライト画像を用いた土壌分析により、より適した作物の選択や栽培計画が可能になっています。
このような効率化は、自給率の維持に重要な要素となっています。
技術革新
技術革新は生産コストにも影響を及ぼします。新しい技術を導入することで作物の生産量を増やす一方で、その導入や維持には高いコストが必要です。
しかし、これらの投資は中長期的には生産コストの削減や品質向上につながり、結果的には消費者への価格影響を最小限に抑えつつ、自給率の維持を可能にしています。
カナダの食料自給率が意味すること:持続可能性と食料安全保障
高い食料自給率:国家の持続可能性
カナダの高い食料自給率は、国家の持続可能性と密接に関わっています。
自国での食料生産に依存することは、国内の雇用機会を増やし、経済を活性化する一方で、持続可能な農業技術の導入や土地管理の改善を必要とします。
カナダ政府はこれらの課題を理解し、2022年に発表した「持続可能な食料生産のための政策」で農業の環境負荷の軽減に取り組んでいます。
食品の安全保障
食料自給率が高いということは、国内の食料供給を確保し、食品の安全保障に対する信頼を高めることを意味します。
カナダは豊富な農産物を通じて国民の食料需要を満たし、同時に食品の安全性と品質を確保するための厳格な監視体制を持っています。これは、公衆の健康を保護し、食品関連の危機を回避するための重要な戦略です。
輸出大国としての重要性
そして、カナダの高い食料自給率は、世界の食料安全保障にも貢献しています。
カナダは食料輸出大国であり、多くの国々が食料輸入に依存している現代において、カナダの役割は重要です。FAOによると、カナダは2019年に全世界の小麦の約14%を生産し、安定的な食料供給源となっています。これは、国際的な食料安全保障に対するカナダの大きな貢献を示しています。
カナダの食料自給率の高さは、自然環境と人間の知恵が結実した結果です。
未来に向け、カナダは技術革新と持続可能な方法を通じて食料生産をさらに進化させるでしょう。
私たちは、自然と共存しながら、持続可能な食料生産を実現するカナダから学ぶことが多くあります。
【参考資料】
カナダ統計局カナダ農業・農産食料省
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