国連によると、世界の約9人に1人が飢餓状態で、子どもだけで見ると4人に1人が飢えに苦しんでいると言われています。
飢餓と聞くと、遠い国の話だと思う方も多いのではないでしょうか?
今回は、日本にも存在する相対的貧困層の飢餓の原因と解決策についてご説明します。
日本の飢餓問題の現状と背景
飢餓問題の原因と日本の状況
日本では一般的に飢餓問題は海外の問題と捉えられがちですが、実際には日本国内でも食事の量や栄養が十分に摂取できず、死には至らなくても健康に影響を及ぼすケースが存在します。
主な原因としては、経済的な困難や生活環境の変化、高齢者の孤立などが挙げられます。また、日本は食糧自給率が低く、輸入食料に依存していることも飢餓問題と関連しています。
日本の相対的貧困
「相対的貧困」とは、一定の収入水準以下の生活を余儀なくされている状態を指す概念で、一般にその国の中央値収入の半分以下を得ている人々の割合で表されます。
厚生労働省の「2018年 国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困の基準は、年収127万円以下とされており、相対的貧困率は15.7%に達していると言われています。
日本の相対的貧困の人口としては、約2,000万人が貧困ライン以下で生活していることになります。
相対的貧困の人の食事の問題として、以下の問題が挙げられます。
食事の質的な問題
相対的貧困状態にある家庭では、安価な食材や加工食品を選ぶ傾向があります。その結果、食事の栄養バランスが乱れ、肥満や非感染性疾患(NCDs)のリスクが増加する可能性があります。
食事の量的な問題
また、必要な栄養を摂るための食事量を確保することが困難で、結果的に栄養不足に陥る可能性もあります。
SDGsと日本の飢餓問題への取り組み
SDGs(持続可能な開発目標)の第2の目標である「ゼロハンガー」は、2030年までに飢餓を根絶し、食料安全と栄養改善を達成することを目指しています。
日本では、政府や地方自治体が食品ロス削減や給食制度の充実、低所得層への支援策などを通じて、国内の飢餓問題に取り組んでいます。また、日本は国際的な支援活動にも積極的に参加し、世界の飢餓問題解決に協力しています。
気候変動がもたらす影響と食の安全
気候変動は農業に大きな影響を与え、食の安全にも影響を及ぼします。
近年の日本では、豪雨や干ばつなどの自然災害が頻発し、農作物の収穫量に影響が出ています。これにより、食料価格の高騰や食料供給の不安定化が生じることがあります。今後、気候変動対策と食糧安全保障の両立が、日本の飢餓問題解決のカギとなります。
日本の子どもの貧困
日本の子どもの貧困率
日本は経済大国として認識されていますが、子どもたちの中には経済的に困難な状況に置かれている者も少なくありません。
OECDのデータによれば、日本の子どもの相対的貧困率は約13.9%(2020年時点)と、先進国の中でも高い水準にあります。
これは、所得の中央値の半分以下の生活を余儀なくされている子どもたちが全体のほぼ7人に1人いるということを意味します。
人口にすると、日本でも約235万人の子どもたちが満足にご飯が食べられない環境にあります。
子どもの貧困が引き起こされる原因
子どもたちが貧困に陥る背後には、さまざまな要因が存在します。
特に日本では、非正規雇用の増加や離婚率の上昇などが影響を及ぼしています。非正規雇用者の所得は安定せず、その結果、子育て世帯の経済的な負担が増大しています。
また、シングルマザーの家庭では、一人で子育てと働き方の両立を図る困難さから、子どもたちが貧困に陥りやすい状況にあります。
食品ロスと日本の飢餓問題への影響
食品ロスと日本の飢餓問題の関連性
食品ロスは生産から消費までの食品サプライチェーンの各段階で発生し、これらのロスは飢餓や食糧不安を抱える人々にとっては大きな無駄となります。
日本の食品ロスは年間約523万トンと言われています(環境省、2023年)。
一方で、日本には「生活困窮者」と呼ばれる、日々の生活に困難を抱える人々が存在し、その数は約613万人にのぼるとされています(厚生労働省、2015年)。これは、日本人口の約5%に相当します。
生活困窮者とって、食品ロスは潜在的な食糧資源となり得ます。
食品ロス削減の取り組みと目標
2020年に閣議決定された「食品ロス削減推進基本方針」により、2030年までに食品ロスを2015年度比で50%削減することが目標とされています。
これは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3に沿った目標であり、日本が国際社会に貢献するための取り組みでもあります。
具体的な取り組みとして、消費期限表示の見直しや、小分け包装の普及、フードバンク活動の支援などが行われています。また、企業に対しても、循環型社会の実現を目指し、食品廃棄物の削減やリサイクルの取り組みを促しています。
食品ロス削減に向けた市場と家庭の役割
食品ロス削減に向けて、市場や家庭も重要な役割を担っています。 市場では、見栄えの悪い果物や野菜も積極的に販売することで、生産段階での廃棄を防ぐ努力が求められます。
家庭においては、買い物や調理時に適正な量を意識し、食材を無駄にしない工夫が重要です。また、子どもたちに食品ロスの問題を教え、将来の食品ロス削減につながる意識を育てることも大切です。
貧困と食の格差: 都市部と地方の違い
収入格差と食のアクセス問題
貧困と食の格差は、収入格差と密接に関連しています。 低所得者は、健康的な食品にアクセスする機会が限られることが多く、栄養不足や健康問題につながります。
都市部では、コンビニやファストフードが主流となり、栄養価の低い食品が手に入りやすくなっています。一方、地方では、スーパーマーケットや商店が限られており、食のアクセス自体が困難な場合もあります。
地域別の食料確保と安定供給
都市部と地方の食料確保と供給の違いは、地域経済や農業生産の格差からくるものです。
地方では、小規模農家が多く、生産量が安定していないことがあります。また、気候変動や天候不順が農作物に影響を与えることもあり、安定供給が難しい状況が続いています。
子どもたちの飢餓: 学校給食と支援プログラム
子どもの栄養不足と発育への影響
子どもたちの栄養不足は、身体的・精神的発育に大きな影響を与えます。
特に、成長期においては、適切な栄養素が不足すると、免疫力の低下や学力の低下、慢性的な疲労などが生じることがあります。
また、栄養不足は成人期にも影響を及ぼし、糖尿病や心血管疾患のリスクが高まることが指摘されています。
学校給食の役割と地域支援
学校給食は、子どもたちに栄養バランスの良い食事を提供することで、飢餓や栄養不足の問題に対処する重要な役割を果たしています。また、地域や家庭の状況によっては、学校給食が子どもたちにとって唯一の栄養源となることもあります。
地域支援としては、食材の提供やボランティア活動を通じて、学校給食の充実を図ることが重要です。
支援活動と子どもの健康向上
子どもたちの健康向上を目指す支援活動は、多岐にわたります。
例えば、児童館や学童保育での食事提供や、地域の子ども食堂の開設などが挙げられます。これらの活動は、子どもたちに安心して食事ができる場を提供し、栄養状態の改善に寄与しています。
また、保護者に対する栄養指導や、健康的な食生活に関する情報提供も、子どもたちの健康向上に繋がる大切な取り組みです。
日本の食糧自給率と飢餓問題の関連性
食糧自給率の現状と課題
日本の食糧自給率は、2020年度で37%程度と低く、先進国の中では最も低い水準にあります。
これは主に、人口が多い都市部での食料需要が高まる一方で、農業従事者の高齢化や後継者不足、農地の荒廃などが原因となっています。このため、食糧供給が国内外の事情に左右されやすく、飢餓問題が深刻化するリスクが高まっています。
食料生産と農業の持続可能性
食糧自給率向上に向けては、食料生産と農業の持続可能性が重要です。具体的には、環境に配慮した農法の普及や、農地の有効活用、新たな農業技術の開発が求められます。
また、若者や女性の農業参入を促し、農業人口を拡大させることも、食料生産力の向上につながります。
2030年までの食糧自給目標と取り組み
政府は、2030年までに食糧自給率を45%に向上させる目標を掲げています。この目標達成に向けて、農業の生産性向上や食料ロス削減、地域産地消による食料需要の安定化などの取り組みが進められています。また、消費者に対する国産食品の魅力や安全性を訴求し、国産品の消費を促進することも、食糧自給率向上に重要な役割を果たします。
※農林水産省SDGsの目標とターゲット:17の目標と食品産業とのつながり
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